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刺繍と絵の具のあいだで
浅間あす未の作品を初めて見たとき、「絵画」と「手芸」の境界がふわりと溶けていく感覚にとらわれる。
彼女の作品は、キャンバスにアクリル絵の具で描いた下地に、毛糸や刺繍糸、ビーズ、ラインストーンなどを縫い合わせてつくられる。
絵具の平面に、刺繍の立体感と素材の質感が重なりあい、画面はまるで小さな舞台のように生き生きとした存在感を放っている。
この技法は、偶然のようでいて必然だった。
育児中に絵の具を広げられない環境のなか、「描く」手段として刺繍にたどり着いた彼女は、次第にそれを「表現の核」に変えていく。
描くことと縫うこと、紙と布、絵と手芸。それらの垣根を越える表現は、結果として浅間独自のジャンルを築くことになった。
キャンバスという画家の基本的な支持体を用いながらも、糸による線描やビーズによる点描が絵画の内部に存在することで、作品は二次元的な「見るもの」ではなく、触覚に訴えるような「感じるもの」に近づいている。
言い換えれば、彼女は絵画を“視覚と触覚のあいだ”で再構成している作家なのである。
素材で語る、感情のディテール
浅間が選ぶ素材には、徹底したこだわりがある。
使用する糸は主にDMC社製で、色味や質感に応じて他のメーカーの糸を併用する。絵具はホルベイン。
ビーズやラインストーンは浅草橋の問屋や地方の古い手芸店で収集され、すでに廃盤になったものも彼女の作品のなかで再び命を得る。
この素材選びの過程は、まるで演出家が役者を選ぶようなものだ。
主役の糸に対して、脇役としてのビーズがきらりと引き立てる。あるいは、絵具の下地が空気のように全体を包み込み、見えない部分で画面を支えている。
さらに特筆すべきは、彼女の構成感覚である。
絵の中の“間”を活かしながら、糸のストロークやビーズの並びにリズムを与え、図像全体に音楽的な呼吸をもたらしている。
これらは偶然に見えて計算された設計であり、感性と論理の両方を備えている作家でなければ成し得ない技術である。
その制作姿勢には、観察と実験が並走している。
たとえば、刺繍針がキャンバスの端に届かない問題には「ぬいぐるみ針」という長針を導入するなど、道具にも工夫を重ねている。
表現の幅を広げるための試行錯誤は、手作業であることの限界ではなく、むしろ自由の起点なのだ。
“とぼけた可笑しみ”の裏にある直観と哲学
浅間あす未の作品には、どこか憎めない、とぼけた表情をしたキャラクターがしばしば登場する。
愛らしく、少しとぼけていて、何を考えているのか分からないような存在たち。それはまるで、日常のなかにふと現れる“自分自身の分身”のようでもある。
しかし、そのユーモラスな表情の奥には、鋭い観察と直観が息づいている。
彼女は夢の中や白昼夢のような意識の揺らぎのなかで得たインスピレーションを形にしており、作品には「かわいい」だけで終わらない、意識の深層が反映されている。
言葉にならない感情、説明できない違和感、そして時に希望のかけらのようなものが、刺繍の糸の中に丁寧に仕込まれているのだ。
また、彼女が目指しているのは「心に作用する作品」である。
かつて親が子どもの服に魔除けの刺繍を施したように、浅間は見る者に良いエネルギーを届けたいと語る。
社会が不安定な時代に、絵画ができることは何か。その問いに対して、彼女は答えを押しつけず、そっと糸で包み込むように返してくる。
浅間あす未の作品は、飾るだけでなく「感じるアート」である。
日常の壁に小さな笑顔と直観を添えるように、彼女の刺繍絵画をひとつ迎えてみてはいかがだろうか。
心のリズムが、少し優しく整っていく。
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浅間あす未 Asumi Asama |
Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
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